6月から新たに導入される「森林環境税」は、国内の森林整備を目的としており、約6200万人の納税義務者から1人当たり年間1000円が徴収されます。これは住民税に上乗せする形で徴収され、国に納められた後、各都道府県や市町村に配分される予定です。この新しい税金により、年間約620億円の税収が見込まれています。
森林環境税の使い道と課題
森林環境譲与税の実績
2019年度から始まった「森林環境譲与税」による交付金は、各市町村に配布されています。例えば、静岡・浜松市では2022年度分の交付金を森林整備や人材育成に使用し、全額を使い切っています。一方で、東京・渋谷区のように人工林がない地域では、配布された交付金の多くが未使用のままとなっています。
課題点
こうした状況は他の市町村でも確認されており、2019年から2023年までに配分された約1280億円のうち、約494億円(約4割)が未使用のままです。この問題は、税金の有効活用に対する疑問を生んでいます。
住民の反応と懸念
新しい税金に対する納税者の反応は様々です。70代女性は「何のための税金?取られたくないよね」と不満を述べ、40代女性は「それがどんどん増えていったら厳しい。あまり無駄な使い道を増やしてほしくない」と懸念を示しています。また、60代男性は「森林がないところだったら、あるところに譲ればいいし、うまく融通きかせればいい」との意見を持っています。
専門家の見解
東京経済大学の佐藤一光教授は、森林環境税の導入について次のように述べています。
負担の配慮
「2019年から既に森林環境譲与税の交付が始まっています。東日本大震災を受けて2014年から復興を目的に、個人住民税に年間で1000円上乗せされて徴収されていた復興特別税が終了するタイミングで森林環境税を導入することは、ある意味では負担に対する配慮と言えるでしょう。しかし、復興増税のまま税収を維持しようとしているのではないかという疑念も生じます。」
課税方法の問題点
「100億円所得がある人も200万円の所得の人も同額の1000円を払うのは不公平であり、非常にダメな税金のタイプです。カーボンニュートラルを目指すなら、カーボンタックスの方が適切でしょう。」
カーボンタックス(炭素税)は、環境破壊や資源の枯渇に対処する取り組みを促す「環境税」の一種です。石炭・石油・天然ガスなど炭素の含有量に応じて税金をかけて、化石燃料やそれを利用した製品の製造・使用の価格を引き上げることで需要を抑制し、結果としてCO2排出量を抑えるという経済的政策手段です。
活用されていない交付金の実態
「未活用と言われる交付金の多くは、将来の公共施設建設や改築のために貯めているケースが多いです。都市部の自治体が森林環境譲与税を活用できていないのは、将来のために貯蓄しているためです。」
人材育成の重要性
「人口減少の日本では、人に投資することが重要です。林業は賃金が低く、危険度が高いため、魅力的な仕事にするための投資が必要です。」
個人的な意見
森林環境税の導入は、森林の保全と整備に必要な財源を確保するために重要な取り組みです。しかし、税金の使い道が明確でなく、一部の自治体で未使用のままになっている現状は改善が必要です。また、所得に関係なく一律に徴収される課税方法には見直しが求められます。適切な使い道と公平な課税方法を模索し、納税者が納得できる形での運用が求められます。
これからも持続可能な森林管理を目指し、適切な税金の運用と人材育成に注力していくことが、私たちの未来のために重要だと考えます。
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